待ちに待った苺姫の到着

待ちに待った苺姫の到着

 

 四月は、春もたけなわ。

「春風に、ぴったりな苺のタルトを、作ってみたいな~~」

なんて思い、

「思っているだけじゃなくて、これを、本当に作ってしまうには、いったいどうしたらいいんだろう」

と考えました。

 

 まず、最初に悩むのが、タルトの生地のクリームを、チーズクリームにするか、それとも、カスタードクリームにするかです。

 

 これは、大問題となる訳なのですが・・・ いくら考えても結局は、どちらも捨てがたいので、カスタードチーズクリームの、こってりとこった、特製私のオリジナル自家製クリームを、作り出してみようと思うのでした。

「さてさて、これは、言うが易し」

大変です。 いつもの行き着けのお気に入りのケーキ屋さんからヒントを得た、このチーズクリームとカスタードクリームを混ぜ合わせた、カスタードチーズクリームには、手間をかけただけの、味わいがあります。 この手間のかかる、少々手の込んだクリームを、お手の物にしてからは、

「我が、自己流のクリームも、プロ顔まけの、たいした腕前だ」

と我ながら、大いに満足している次第なのです。

 

 しかも、ケーキの代表とも言える、苺を使うのですから、これは、やはり、カスタードチーズクリームの、こってりとこった、特製私のオリジナル自家製クリームにチャレンジしなくてはなりません。

「そろそろ春もたけなわだし」

「ここでひとつ、春らしくケーキの女王様である、苺を使っての、カスタードチーズクリームの、可愛らしいタルトケーキなんぞを、どうしても作るぞ」

と思い切って決意したのでした。 さて、この苺のタルト、なんと言っても、可愛らしさの秘訣は、赤い苺。苺は、大きすぎず、小さすぎずの、甘そうな粒の揃ったものを、選ばなくてはいけません。静岡から栃木や千葉と、産地も、それはそれは、いろいろ豊富で、

「苺摘みに出かけたくなるくらい」

とは言っても、ケーキの果物探しに、そこまでは、していられません。 いつものスーパーで、美味しそうなパックを選ばなくてはならないのです。 ところが、今年は、なんと、意外な失敗を、しでかしてしまい、大慌てだったのでした。 ケーキの女王様である、苺を使うのは、このところ、久かたぶりなせいだったのか、いつもなら、何の事はない苺選びで、びっくりするほど、どうにもならない見込み違いをしてしまったのです。 最後の最後に、可愛く出来上がったタルト生地の上に、

「さあ、苺を乗せましょう」

としたところ、何と、肝心な苺が足りないのです。 あのスーパーで選んだパックの苺が、粒も、そこそこに大きくも小さくも無く、揃った苺が、どう旨く乗せて、敷き詰めようとしても、ケーキのタルト型の上に、半分ぐらいにしか、ならないのです。

「どうしましょう!」

 

 この自家製の苺のタルトは、ぎっしりと、丸ごとの苺が、敷き詰められたように、乗っているのが、私流の出来上がりのイメージなのに、

「ああ、それなのに、これではデコレーション出来ないし、ぜんぜん足りない」

こんなに苦労して、カスタードチーズクリームの、こってりとこった特製私のオリジナル自家製クリームを作り、後は、デコレーションのみ、と言うところで、どうしたものか、準備したワンパックでは、とうてい足りないと言うことです。 不思議なものです。しばらく苺を使ったケーキを、作ることが無かったからといって、これでは、まるで、熊が冬眠でもしていたかのようです。久しぶりに、また春が来て、いざ作ろうとしてみると、

 「何と、この有様!」

「そう言うカンのにぶりって、あるものなんですね・・・」

しかたなく、もうワンパック買いに駅前のスーパーまで、大急ぎで走るしか無いと、すぐにも悟りました。

「どうか、あの苺がありますように!ああ、神様、仏様、どうかありますように」

と拝むような気持ちです。

 

 そうして、いつもの駅前のスーパーに、やっと辿り着き、果物売り場へ一目散に直行!!!運良く、まったく同じものが、まだあって、これでほっと、ひと安心。 どうなるものやらと、ドッキリしましたが、そんな訳で、やっと後から、お待ちかねの、苺姫が到着して、今月のケーキ作りも一段落。

「めでたし、めでたし」 

これで、最後の仕上げに、冷蔵庫で冷たく冷やして、苺姫のぎっしり乗った、タルトケーキの出来上がりです。

 

 

     つぶつぶの苺のつぶの数幾つ     貴子